昔から旅人が行き交う宿場町だから生まれた出会いと人情、支え合い。
合同会社オフィスキャンプ、古民家宿「難波邸」、農家民宿「UJITEI」、「トム・ソーヤー冒険村」運営 山本 侑香さん(左)
- プロフィール
岡山県津山市出身
大学卒業後、ベルギー・アントワープを経て2012年にUターン移住
家族構成はジュエリーデザイナーの夫と子ども1人(移住時は夫妻のみ)
アトリエナカウテ 一級建築士事務所 代表 丸山 耕佑さん(右)
- プロフィール
福岡県出身
大学卒業後、東京の設計事務所で勤務
1級建築士取得後、2016年に美作市地域おこし協力隊として単身Jターン移住
2019年に関西から移住してきた由里子さんと結婚
- 移住先
美作市
伝統とモダン、人が交わる宿場町
(山本)デザインを生業とする私たち夫婦は、因幡街道の宿場町として栄えた「大原宿」のある美作市に移住。
津山市で農家民宿「UJITEI」を運営していたノウハウを生かし、街道に面した古民家宿「難波邸」(コワーキングスペース・ジュエリーショップ併設)も運営するようになりました。
地域の材料を生かして新たなプロダクトを開発し、宿で販売するなど、デザインと地域を組み合わせた活動を展開し、地域の魅力をデザインの力で国内外に発信しています。
大原宿の美しい町並みを眺めていると、ここで何かを始めたい人が増えるといいなと思うようになったんです。
(丸山)東日本大震災を機に田舎暮らしを考え始め、2013年に美作市の「山村ワーキングホリデー」に参加。
そこで、先輩移住者の山本夫妻に出会い、田舎を拠点にクリエイティブな活動をしている二人の姿に感銘を受けたんです。
(山本)私と夫が東京で開いた展示会にも来てくれたんですよね。
(丸山)同じ年というのもあって親しくなり、我が家に泊まっていただいたことも。
私も美作に何度も通いました。
ここで何ができるか3年かけて模索し、2016年、美作市地域おこし協力隊として着任。
山本さんがいるから全く不安はありませんでした。
元々、自然素材を使った建築がしたいと考えていたので、資源が豊富なのもすごく魅力的でした。
在任中に、集落の住民の皆さんと一緒に古い蔵を活用したスモークサウナ「パブリックハウスアンドサウナ久米屋」を開業。
今も地域一丸となって運営し、全国各地からサウナファンが訪れてくれるなど好評を得ています。
移住者が移住者を呼び込む好循環
(丸山)移住後、山本さんとのつながりで大原宿に出店を希望していた妻と出会い、建築士として店舗設計や古民家の改修を担当して出店を手伝い、開業後に結婚しました。
妻のお店は自家製のあんこを使ったスイーツなどを提供する喫茶店で、店内の一角に私の仕事スペースも設けています。
この頃から、山本さんと協力して出店者や移住者のサポートを行うようになり、少しずつ通りに店が増えてきましたね。
建築士として空き家のアテンドや大家さんとの交渉にも関わり、改築の相談にも応じています。
県内には古い町並みが各地にあり、ポテンシャルが高いのに、良さが知られていないのがすごくもったいないと感じています。
(山本)同じ通りで仲間と一緒に商売できるとすごく楽しいし、未来への可能性を感じています。
コミュニティが育ってきていると感じますね。
通りを歩けばみんな顔見知りなので、「こんにちは」と声を掛け合います。
互いの店を行ったり来たり、昔ながらのコミュニティのよう。
「子育て面でも安心できるしいいな」と思いますね。
(丸山)移住者の店が増えた今も、この町に関心がある人の相談に応じています。
人とのつながりを大切にする人が徐々に増えていけばいいなと思っています。
最近、美作市の伝統産業である「みつまた栽培」の後継者候補が現れたので、その方の住居相談に応じたり、これからの展開や生活を一緒に模索したりしています。
さらに人を呼び込む街道へ
(山本)今や全ての宿を合わせると年間1万人以上のお客様を迎える宿に育ち、長期間滞在するアーティストや海外の方も増えています。
さらに、ここ大原宿と因幡街道でつながる兵庫県の平福宿、鳥取県の智頭宿の事業者と協力し、お客様に三宿を回遊していただけるような情報発信や仕組みづくりにも取り組んでいます。
(丸山)地域を巻き込んで何かするなら「一緒につくる」のが一番早いと思います。
私の場合は建築ですが、地域の方々と一緒につくりながら考え、使いながらつくることで、集落にある古い建物に新たな命を吹き込み、みんなの財産だと思ってもらえるようにする。
人々の生活の近くにあるみんなの建築こそが私が移住後にやりたかった建築の形ですね。
大原宿に関心があるならば、まず遊びに来てみてください。
人とのつながりをつくってみることから始めたらいいと思いますよ。