岡山晴れの国ぐらし

移住者インタビュー

杉本 和歳さん

二地域居住から移住へ。子どものふるさとをつくりたい。

タイラーデザイン事務所代表 杉本 和歳さん

プロフィール

岡山県出身
都内の大学卒業後、デザイン事務所を創業し、2015年から東京と笠岡で二地域居住を開始
笠岡ではシェアアトリエ「海の校舎」を拠点に地元からの仕事の依頼も数多くこなす中、2023年に笠岡市へUターン移住
家族構成は、妻と子ども1人(移住時2歳)

移住先

笠岡市

ふるさととのつながりを残したい

東京での生活に不満がなかったこともあり、岡山に戻ろうとは思っていませんでした。
しかし、働き始めて間もなく母の病気が分かったことをきっかけに、いずれ地元とのつながりがなくなってしまうという感覚が芽生え、どうやったらふるさととつながり続けることができるだろうかと考えるようになったんです。
母の見舞いで月に数回、東京と笠岡を行き来していたことから、笠岡にも仕事ができる環境をつくれないかと思い、SNSで定期的にこちらに滞在していることや自分の仕事について発信するようになりました。
当時は二地域居住をしようと意気込んでいたわけではなく、「見舞いの機会を生かして地元とのつながりをつくれたら一石二鳥だ」と気負わず考えていました。
そんな時、市内で、デザインの力で地域づくりに取り組む事業が立ち上がり、市が制作する冊子の装丁デザインに携わることに。その後だんだんと笠岡での仕事やいろいろな人との交流が増えていき、本格的に二地域居住を始めました。

ふるさととのつながりを残したい

地方にあるチャンスを生かして

二地域居住をするなら、地方でも仕事をつくることが重要だと思います。仕事があれば定期的に地方へ行く理由ができるし、移動などにかかるコストを賄うこともできる。地方には未開拓の分野も多いので、都会の人が経験やスキルを生かせるチャンスがたくさんあるように感じます。
いきなり起業することにハードルがあるなら、まずは自治体の相談窓口や地域のキーパーソンを頼るのも手です。
あと地域のイベントの実行委員会に入り、「こういうことができます」と売り込むのもいいですね。
私も二地域居住を始めた当初、まちづくりのための企画会議に参加するなどして交友関係を広げたら、人づてに紹介される仕事も増えました。
クライアントとの距離が近く、仕事をした後に友達になるような関係性を築きやすいのが東京とは違う地域の良さですね。

地方にあるチャンスを生かして

作り手が集うシェアアトリエ「海の校舎」

二地域居住を開始して数年後、市内の廃校になった小学校を活用し、シェアアトリエ「海の校舎」をつくる構想を聞き、「ぜひ入居し運営にも携わりたい」と申し出て、立ち上げから関わりました。
現在も母体となるNPO法人の理事を務め、「海の校舎」関連のデザインのほとんどを手掛けています。
木工家具職人や布・革製品職人など多様なクリエイターが集まっている場所なので、他の入居者と気軽に情報交換や仕事の相談ができますし、日常の会話の中からコラボレーションが生まれたり、仕事を紹介し合えたりするなど相乗効果もありますね。
何より、雰囲気のある木造校舎で瀬戸内海を目の前に望みながらデザインの仕事ができる環境が、とても心地よいと感じています。

作り手が集うシェアアトリエ「海の校舎」

二地域居住から移住へ

結婚して子どもが生まれてからは、3回に1回くらいは家族と一緒に笠岡へ。
そんな中、将来的に笠岡へ移住したいという話は妻に相談していました。
やっぱり子育てするなら自然豊かな場所が良かったし、都会ではない場所を息子のふるさとにしたいという思いもあり、息子の保育園入園に合わせて移住を決めました。
妻は地方で暮らした経験がなく、最初は車の運転を不安がっていましたが、すぐに慣れたようです。
二地域居住を通して私も妻もこちらで暮らすイメージができていたので、スムーズになじめました。
笠岡で生活していると、子どもをすごく温かく見守ってくれるのでほっこりします。
息子と買い物や散歩をしていると地域の方が気さくに話し掛けてくださることも。
あと、保育園に広い園庭があって、ここで毎日遊べるなんていいなと思いました。
移住してもうすぐ1年。今は「海の校舎」の近くに家を建てようと計画中です。
広い庭を作ってDIYや家庭菜園などを楽しみたいし、ニワトリも飼ってみたい。都会ではできなかったことに挑戦できることにすごくワクワクしています。

二地域居住から移住へ

将来の選択肢を広げるヒントに

例えば、将来子どもが都市部の高校へ行きたいと言ったとしても、私が二地域居住を再開すれば、笠岡から完全に離れなくてもいいし、息子にも「いいよ」って言ってあげやすい。
移住したら二地域居住をしていたことは過去のものになってしまうわけじゃなくて、その経験が、家族の将来の選択肢を広げるためのヒントになるんじゃないかなと思います。

将来の選択肢を広げるヒントに